助産院とは、病院のように陣痛促進剤や吸引分娩、会陰切開などの医療行為を行うことなく女性本来の力を生かして自然分娩をする施設です。
医師は常駐しておらず、出産に関する専門家である助産師が運営しています。
知識も経験も豊富な助産師たちのサポートはとても心強く、そして何より、彼女たちのホスピタリティは素晴らしいものでした。
助産院で出産をする人はまだ少数派で、どのような施設なのかよく知らない方もいるのではないでしょうか。
今回は、私が通った助産院での費用や健診、産前産後のケアについてご紹介します。
提携先の病院と助産院、両方で健診を受ける
助産院には必ず提携先の病院があります。
妊婦健診は助産院だけでなく、提携先の病院でも受けることになります。
一度に両方ではなく、今回は助産院、次回は病院、というように片方ずつ受けます。
いつ頃どちらで受けるかは、医師や助産師が指示をくれました。
私の場合は安定期まで病院で受け、その後は40週4日目に出産するまで病院と助産院、ほぼ交互に受けました。
- 病院での健診
- 助産院での健診
7・12・16・21・28・35・36・38・40週目
25・31・34・37・39週目
合計すると14回なので、病院にのみ健診に通う場合と同じくらいの回数です。
病院の健診の際には毎回助産院の助産師が付き添ってくれ、一緒に医師の話を聞いてくれました。
助産院での健診の内容
助産院では医療行為はできないため、血液検査や薬の処方等はありません。
尿検査や血圧・体重・腹囲・子宮底長の測定、むくみ、胎児の心音チェックなどの基本的な検査項目は同じです。
胎児の向きや位置は触診で確認していました。
完全予約制で、毎回1時間程度かけてじっくりと健診してくれました。
院長が整体にも精通していたので、体の歪みや姿勢をチェックし、歪んでいたり凝り固まっているところは軽くほぐしてもらえました。
(※本格的に整体を受ける場合は別料金でした。)
そしてその人その人に合わせたストレッチや体操などのホームケア指導も毎回ありました。
時間にゆとりがあるので前後の方を気にすることもなく、どんなに些細なことでも気軽に質問することができました。
妊娠37週目の健診では、実際に出産で使用する部屋で主人と一緒に分娩のシミュレーションを行いました。
出産するときの体勢や、いきみを逃すための呼吸法、主人はどのように私を支えると良いのかなど、ベテラン助産師のこれまでの体験談を交えながら細かく教えてもらいました。
妊娠後期に入っても出産というのはまだまだ未知の世界でしたので、このシミュレーションはとても参考になりました。
エコー写真を集めていたのですが、助産院で健診の日は当然エコー写真はもらえませんでした。
また、助産院で取り扱えるのは「正常な妊娠・分娩・産褥」のみなので、検診中にもし何か異常があったり気になる点があった場合には、提携先の病院に行き医師に検査をしてもらうことになります。
私も25週目の健診のときに胎児の心音の乱れを指摘され、助産院からタクシーで提携先の病院に行きました。
幸い何の異常も無かったのですが、移動中や待ち時間の間、気が気ではなかったです。
あのときは、健診は病院で受ける方が何かあったときに移動の手間もないし安心かな……と思ってしまいました。
そういった施設なら、何か異常があったときには併設の病院で医師にみてもらえるようです。
助産院での費用
助産院での診察費用
私が通った助産院では補助券を使うことができませんでした。
代わりに、助産院の領収証を持って役所に行くと助成金が貰えました。
健診代が8150円に対し助成金は5070円でしたので、毎回3000円ほど負担することになります。
病院で補助券を利用しても大体2000円〜5000円は負担していたので金額的には大差ないようです。
けれど、やはり補助券が直接使えないというのは不便でした。
産後は役所で手続きをしなければならないことが色々ありますが、そこにさらに助成金の払い戻しが加わります。
慣れない育児でバタバタしていたので余計に手間に感じました。
ごく一部の助産院では、補助券が使える施設もあるようです。
助産院での出産費用
助産院での出産費用に関しても病院と大差ありませんでした。
私が通った助産院と提携先の病院との比較になりますが、分娩料は病院よりも安かったのですが入院費が高かったので、結果同じくらいでした。
ちなみに、出産一時金の直接支払い制度も助産院では使えないため、産後の払い戻しです。
私の場合はオープンシステム(助産院ではなく提携先病院の一室を借りて分娩する)を利用したので、助産師たちへの出張費用と病院の施設を使用する料金等がかかりました。
そのため、病院のみ・助産院のみで出産、入院するよりも7〜8万円ほど高くなりました。
助産院の産後ケア
助産院は規模が小さい分、1人1人に対するケアがとても手厚かったです。
おっぱいケア
授乳のときは、夜中以外は付き添って姿勢やおっぱいの状態を見てくれました。
(※夜中でも、ナースコールをすれば夜勤の助産師がすぐに来てくれました。)
母乳マッサージも毎日受けられました。
肩甲骨の周りが凝っていると母乳がよく出ないそうで、乳首だけでなく背中もよくほぐしてくれました。
母乳マッサージの際に米ぬかカイロをあててくれたのですが、それもとても気持ちよかったです。
食事
母乳のことを考えて作られた、手作り感あふれる和食中心の「おうちご飯」でした。
水分をよくとるように言われ、よもぎ茶が常にポットで置いてありました。
献立はその人その人に合わせて考えられていました。
私はなかなか母乳が出なかったので、途中から食事の量を増やしたり、ご飯をもち米にしたりしてくれました。
その他
毎朝足湯をし、蒸しタオルで体を拭いてマッサージをしてくれました。
私は妊娠中に痔になり出産で悪化してしまったのですが、痔と会陰の傷の治りをよくするために毎日お灸をしてくれました。
抱っこの仕方や赤ちゃんの姿勢の変え方、おくるみの巻き方、乳首のくわえさせ方や色々な授乳姿勢、おむつ替えのやり方……分からないことや不安なことは全て、何度でも手取り足取り教えてもらえました。
母子同室で、長女は昼も夜もあまり寝なくて辛かったのですが、頼めば預かってくれたのでその間に睡眠をとることができました。
他に入院している人がいなかったこともありますが、私1人に対して日中は2人以上、夜は1人が常にスタンバイしていました。
この手厚さは助産院ならではです。
ちなみに、赤ちゃんに対する黄疸のチェックやK2シロップの投与、先天性代謝異常検査は助産院でも行います。
二人目もリピートしたい助産院の魅力
補助券が使えない、エコーが無い、何かあったときは病院に移動する…等々、助産院での健診を不便と感じるかはその人の価値観次第だと思います。
ですが、病院と比べると不便な点も多いのが正直な所。
けれど、助産師が私たちと真剣に向き合い、寄り添ってくれた事で信頼関係が生まれ、しだいに不便を感じなくなりました。
そして、この強い信頼関係が、私の出産を素晴らしい体験にしてくれました。
妊婦健診は妊娠の経過をみるだけでなく、ともに出産に挑む助産師たちとの重要なコミュニケーションの場でもあったのです。
妊娠初期から出産までの期間、ずっと支え続けてくれた助産師たちに出産に立ち会ってもらえたことは、本当に幸せでした。
助産院にもそれぞれ特徴があります、助産院に興味があるプレママさんはまず見学してみてはいかがでしょうか?