もしも、生まれてくる子に障害があったなら。
『全てを受け入れて育てられるのだろうか。』
妊娠したママなら、誰しもが一度は考えることだと思います。
もちろん私も同じことを考えました。
『長い妊娠期間、そんな不安を抱えながら過ごすのは嫌だ。』
『障害があると判明したら、産まれる前に心の準備をしておきたい。』
そして・・・
『もしもその障害が重篤なものならば、産まないという選択肢も考えるべきだ。』
という答えに至りました。
今回は、出生前診断を受けた際の体験談をご紹介します。
※この先ネガティブな内容も含みますので、読み進めるにあたりご注意ください。
目次
出生前診断には大きく分けて非確定検査とと確定検査の2種類がある
出生前診断は、大きく分けて2つの種類があります。
まずは、母体にも胎児にも負担が少なく、安価である非確定検査。
そして、検査に痛みがあったり、検査をすることで胎児にリスクが伴う確定検査です。
私は、まずは胎児ドッグと呼ばれる非確定検査を受けてみて、胎児に異常がある確率が高い結果が出れば、確定検査に進もうと思いました。
先だって、出生前診断をメインに扱っているクリニックを予約すると『夫婦そろっての受診が条件』との事。
クリニックの方針にもよりますが、単身赴任中で夫婦揃う事が難しい場合など予約の際に相談してみると良いかもしれません。
初期の胎児ドックではダウン症である確率が非常に高いという結果
初期の胎児ドッグを受けたのは、妊娠13週の頃です。
普通の妊婦検診と同様お腹の上から超音波エコーを用いた検査でした。
検査を受ける間は、自分たちもエコーで子どもの様子が見ることができます。そうして、もにょもにょと動く我が子を可愛いなぁと呑気に眺めていたとき。
『この子、首の後ろの浮腫みが基準値より大きいですね。それに、心臓の三尖弁から血液の逆流が見られる。どちらもダウン症の子に多い症状です』
その場の空気がピリッと変わりました。
検査後、個室に通されて告げられたのは、『ダウン症である確率1/30。その他の染色体異常である可能性も非常に高い』という診断結果でした。
そしてすぐに案内をされる、確定検査。
確定検査というと、子宮に針を刺して羊水を抜き取って検査を行う羊水検査が有名ですが、この検査が可能な時期は妊娠15~18週の間です。
それに対し、私が受けることにしたのは絨毛検査という、妊娠早期の胎盤から絨毛という組織を採取して行う検査でした。こちらは妊娠11~13週の間に行うことが可能です。
同行していた夫と相談し、胎児ドッグの後、その場ですぐに「絨毛検査」を受けました。
お腹に針を刺して受けた絨毛検査
胎盤から組織を採取するということは、お腹から子宮まで長い針を刺すということです。
それはやはり、少なからず胎児に影響があり、検査が原因で死産・流産になるリスクは0.2~1%ほどあると説明を受けました。
また、子宮内感染症など、まれに重度の感染症を引き起こすこともあるそうです。
検査方法は、まず局部麻酔の細い注射を腹部に打ちます。
大きくて長い注射針を子宮まで刺すのは麻酔が効いているので、ほぼ無痛でした。
急変や出血がないか、30分ほど安静にした後はすぐ帰宅できたので、想像以上に母体には負担の少ない検査だと感じました。
絨毛検査では、染色体異常の中でも特に多い21トリソミー(ダウン症)、13トリソミー、18トリソミーの3つは、翌日(最短で)結果が出るとのこと。
私は迷うことなく翌日に結果説明の予約を取りました。
残り23種の染色体については約1ヶ月後に結果が出るため、また後日再び通院することになりました。
もしもお腹の子にダウン症や他の重篤な障害があればどうべきか?
私には、10代の頃から長く患っている持病があります。
妊娠・出産には影響がないものの、体調面から考えて、子どもは1人だけにしようと夫婦であらかじめ家族計画を話し合っていました。
出生前診断を受けることにしたのも、持病を抱えた身で重い障害のある子どもを育てることは難しいと判断したからです。
覚悟をして受けたはずの出生前診断だったのに母性が決心を揺り動かす
絨毛検査を受けた後、隣で険しい顔をして口を閉ざしている夫も、タオルで顔を覆っている私も、既に同じ答えに至っていました。
言葉を選びながら、夫がやっと発したのは・・・
『明日、陽性が確定したら病院に事情を説明して、早めにした方がいいよね。』
それが、私たち夫婦にとっての最善の選択。
お腹の子は諦める。そのための処置は、早ければ早いほど母体への負荷が少ない。
頭では分かっていても、元気にもにょもにょお腹の中で泳ぐ我が子をエコーで見たばかり。
『この子の命を、私の都合で、断つの?』
『そんなことが、許されるの?』
私の中に、まだ見ぬ母性が強く拒絶し、答えは出ているはずなのに、受け入れることが出来ませんでした。
妊娠がわかった時は、
『この私がお母さんだなんて、大丈夫かな?』
『母性は産んだら勝手に湧いてくるのかな?』
なんて、心配すらしていたのに、自分でも気づかない間にしっかり母親になっていました。
確定診断前日は、中絶する決心がつかないまま眠れない夜を過ごしました。
確定検査の結果は全て陰性、気になる一連の検査の費用は合計35万円
泣きはらしたぐちゃぐちゃの顔で聞いた確定検査の結果は、結局全て陰性でした。
染色体異常を原因とする疾患はないと分かった瞬間
『障害がなくてよかった』という安堵ではなく『お腹の子とお別れしなくてよかった』という喜びがとにかく大きかったのを覚えています。
その後の検査で、心臓の逆流については染色体に関係のない疾患が隠れていかもしれないという事で、妊娠中期にもう一度診察し結果、正常になっている事が確認できました。
ここまでの一連の費用は総額で35万円になります。
- 初期の胎児ドッグが約5万円
- 絨毛検査が約25万円
- 中期の胎児ドッグが約5万円
なかなか高額ではありましたが、とても有意義なものだと私たち夫婦は満足しています。
出生前診断で知ることができる障害はほんの一握
結局お腹の子は早産で、妊娠30週に低出生体重児として産まれました。
(※産後2ヶ月NICUにお世話になりましたが現在はとても元気です。)
実際に産まれるまでは、何があるか分からないとはまさにこの事。
しかし、前期破水をするまでの3ヶ月も破水して入院している間も、お腹の中の赤ちゃんに大きな障害がないと分かっているだけで不安要素が軽減され過ごす事ができました。
出生前診断で知ることができる障害はほんの一握りにすぎません。
また、出生前診断によっては、「偽陰性」が出る確率もあり100%ではありません。
そして、出生前診断の結果によっては『生む・生まない』の辛い選択も避けられません。
賛否両論ある出生前診断ですが、検討中の方は遠慮せずかかりつけの産院でまず相談してみましょう。