妊娠初期に実施する血液検査では、さまざまな項目を調べます。
中には血糖値がひっかかり、再検査と言われてしまった方がいらっしゃるかもしれません。
『赤ちゃんに影響はない?』
『すぐにインスリンを打たなければならないの?』
『管理入院が必要?血糖値はどうやってコントロールしたらいいの?』
…など、心配は尽きませんよね。
実は私自身も、かなり早い段階で妊娠糖尿病と診断されました。
糖尿病の自覚症状は全くなかったのでとてもショックを受け、毎日検索サイトや妊娠糖尿病患者さんのブログを調べては落ち込んで…を繰り返したものです。
出産後の娘に特に大きな問題は見受けられず、元気に育っています。
今回は、妊娠糖尿病と診断された私が主治医から教わった知識、実践した食事内容などをご紹介しています。
目次
妊娠糖尿病の診断基準は?どれくらいの患者数がいるの?
妊娠糖尿病は、通常の血液検査1回だけで診断されることはありません。
血液検査で通常時の血糖値が高いと判定された場合、改めて糖負荷試験を行います。
糖負荷試験
糖負荷試験は、75g経口糖負荷試験(750GTT)とも呼ばれます。
甘いサイダーのような液体を飲んでその前後の血糖値を測定し、下記の中で1点でも該当する項目があったら妊娠糖尿病と診断されます。
- 空腹時血糖:92mg/dl以上
- 負荷後1時間血糖:180mg/dl以上
- 負荷後2時間血糖:153mg/dl以上
私の場合、最初の検査で3項目とも全てひっかかってしまいました。
元々糖尿病ではなかったものの、親族で糖尿病が非常に多く、遺伝的・体質的にもなりやすいのだろうという所見でした。
ちなみに私の主治医に質問したところ、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんは、全体の約12%ほどだそうです。
約8~10人に1人の割合なので、それほど珍しい病気というわけでもなさそうですね。
なのでもし妊娠糖尿病と診断されても過度に怖がらず、しっかり血糖値管理をしていくことに集中しましょう。
妊娠糖尿病は母子ともにさまざまな合併症の可能性がある
妊娠糖尿病は、ママ本人には全く自覚症状がありません。
しかし血糖値が高い状態が続くと血管がもろくなり、胎盤に悪影響を及ぼします。
結果として、次のようなリスクが挙げられます。
- 流産
- 早産
- 妊娠高血圧症
- 羊水過多
- 巨大児による肩甲難産
- 先天奇形
- 巨大児
- 発育不全
- 新生児低血糖
- 呼吸障害
先天奇形の原因の1つに糖尿病が挙げられる
ママの血糖値が高いと胎児の血糖値も高くなり、先天奇形を合併しやすいと主治医から説明を受けました。
先天奇形は、妊娠前からの糖尿病が見落とされていた場合に最も多く発生しているそうです。
よって、先天奇形について気になる場合は、妊娠糖尿病と診断された段階で医師とよく相談しましょう。
必要に応じて、出生前診断を受診するケースもあります。
そして何よりも、元気な赤ちゃんを無事に出産するためには、妊娠糖尿病と診断された当日から血糖値を管理することが重要です。
妊娠糖尿病の原因は?インスリンとの関係性は?
妊娠糖尿病になってしまったとしても、『自分の食生活が悪かったのではないか』などと自分を責める必要はありません。
通常、人間は食事をすると膵臓からインスリンというホルモンを分泌し、血糖値をコントロールします。
しかし妊娠中は、お腹の赤ちゃんに栄養を優先して送ろうとするため、胎盤からインスリンの働きを抑制する酵素が発生してしまいます。
これにより、インスリンが体内の血糖値をコントロール出来なくなり、妊娠糖尿病を発症してしまうのです。
つまり赤ちゃんに栄養を届けようとした結果…ホルモンバランスが崩れているという状態なのです。
血糖値は毎日管理、インスリンは必要に応じて投与する。
妊娠糖尿病と診断されたら、血糖値が上がりすぎないように管理していくことが大切です。
血糖値管理に重要なのが、毎日の血糖値測定です。重症度や主治医の指導によりますが、1日数回、自己測定器で血液を採って測定することになります。
血糖値を毎回ノートやアプリなどで記録し、基準値を大幅に超えていないかを管理していきます。
妊娠中は過度な食事制限や運動はできませんので、必要な栄養素はきちんと取りつつ血糖値が上がりすぎないラインを探っていくことになります。それでも血糖値管理が難しい場合は、インスリンを使用します。
妊娠中はインスリンの飲み薬が使えないため、自己注射でお腹や太ももなどに打ちます。
このように、妊娠糖尿病になったからといって必ずしもインスリンを使用するわけではありません。自己測定に基づいて、主治医や管理栄養士と相談しながら血糖値管理をしていきましょう。
妊娠初期の検査で血糖値が100mg/dlを超えていた
私の場合、妊娠初期の血液検査で随時血糖値が100mg/dlを超えており、糖負荷試験を行いました。
その結果は次のとおりです。
- 空腹時血糖:109mg/dl
- 負荷後1時間血糖:186mg/dl
- 負荷後2時間血糖:162mg/dl
3項目全て陽性で、れっきとした妊娠糖尿病です。
私が血糖値管理で目標とした数字は次のとおりです。
- 空腹時血糖:95mg/dl未満
- 負荷後2時間血糖:120mg/dl未満
起床後・毎食2時間後、1日4回を計測しました。
妊娠糖尿病をインスリン無しで乗り切るために実践した6つの対策
出産までインスリンを打つ事なく無事に出産する事ができた、6つの対策をご紹介します。
目標の血糖値は1週間で2~3回ほど超えることはあったものの、概ね血糖値のコントロールも良好で、主治医からも非常に優秀だと褒めてもらえました。
1.食べられる炭水化物量を把握しつつ、たんぱく質を中心にした食事管理を実施
血糖値を大きく上げる要因になるのは、ご飯やパンなどに含まれている糖質です。
従来の妊娠糖尿病の食事管理はカロリー制限を基本とし、「炭水化物が50~60%、たんぱく質が20%以下、脂質が20~30%と指導」されてきました。これは、「炭水化物を減らしたら赤ちゃんに栄養がいかなくなるので、減らしてはいけない」という考え方がベースにあります。
糖質が赤ちゃんの唯一の栄養だからしっかりご飯を食べて、血糖値が上がりすぎるならインスリンを投与すればよい、という指導方法です。
しかし、ご飯をたくさん食べれば血糖値が上がると分かっているのにしっかり食べなければならない…というのは、かなりの精神的負担でした。
「たんぱく質が50~60%、炭水化物が20%、脂質が20~30%」という割合です。
適切に糖質を制限し、その分たんぱく質をしっかり取ります。
そこでまず最初の1週間は、どんな食事をしたら血糖値が上がりやすいかを洗い出すことにしました。栄養バランスが偏らないように注意しつつ、お茶碗にご飯を何グラム食べたら基準値を超えてしまうのか、毎回計測を実施。
結果、私の場合は『1食あたり茶碗半分程度のご飯なら大丈夫』と判断し、主治医にも相談してOKをもらいました。
炭水化物を減らした分、カロリー不足にならないように、たんぱく質をしっかり取ります。
よく食べていたのは次のようなものです。
- たまご
- 納豆
- ヨーグルト
- プロセスチーズ
- 赤身のお肉
- 鯖などの青魚
私はこの点について、自分で糖尿病などの書籍などを読んでしっかりと勉強し、主治医ともよく相談した上で実践しました。
少しずつではありますが、このようなたんぱく質重視の食事管理を提案している病院も増えていますので、一度コンタクトを取ってみるのも良いかと思います。
私が食事管理の際に、購読した書籍は次の通りです。
- ケトン体が人類を救う: 糖質制限でなぜ健康になるのか 著:宗田哲男
- 産科医が教える:赤ちゃんのための妊婦食 著:宗田哲男
- 糖尿病専門女医が教える妊娠と糖尿病 著:櫻岡 怜子
2.べジファーストを徹底し、食物繊維をしっかり取る
手軽にできる方法として、野菜やわかめやきのこなどを最初に食べていました。
食物繊維を最初に食べることで、血糖値上昇を抑える効果があります。
またご飯を食べる際は、雑穀米や玄米を混ぜていました。
食べ応えがあって満足感が高まるので、ご飯好きな人にはオススメです。
3.食事の時間を3食整える
食後2時間後の血糖値測定ができるよう、リズムをきちんと作りました。
1度にドカ食いすることがなくなったので、血糖値の大幅な上昇を防ぐことができました。
4.調味料の使用をできるだけ控えて薄味にする
みりんや醤油といった調味料やドレッシングなどにも、意外と糖質が含まれています。
味付けは、可能な限りシンプル&薄味を心掛けました。
サラダを食べるのが辛かったので、バージンオリーブオイルにほんの少量の塩を加えて食べていました。
生野菜がとても苦手でしたが、慣れてくるとしっかり食べられるようになりました。
5.糖質オフ食品をうまく使う
どうしてもパンやケーキが食べたいときは、たまに糖質カットの食品を食べていました。
ロカボ商品がたくさん出ているので、お気に入りを探していろいろ食べてみるのがちょっとした楽しみになっていました。
きな粉やおからやクリームチーズなど、たんぱく質をしっかり取れる食材でデザートを作ってみるのもおすすめです。
6.食後は可能な限り体を動かす
血糖値が最も上がりやすい食後に体を動かすことで、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
妊娠中は激しい運動はNGですが、食後に散歩したりマタニティヨガをしたりして、無理ない範囲で体を動かすことをおすすめします。
同じ食事でも、運動したときとしなかったときでは、血糖値で20近い差が出た日もありました。
たんぱく質を中心とした妊娠糖尿病の食事管理で得られたメリット
従来のカロリー制限ではなく、たんぱく質をしっかり摂取する食事方法で血糖値を管理することで、嬉しいメリットがたくさんありました。
私は働いていたため、仕事の合間を縫って毎食後2時間の血糖値測定を行うだけでもかなり大変でした。必要な事とはいえ、血糖値測定をしながらインスリンも打つというのは負担が大きいものです。最後までインスリンを打たずに出産できたのは、とても助かりました。
私自身、妊娠前からかなり体重があったので、極力増やさないようにという指導がありました。たんぱく質をしっかり摂取する食事方法を実践することで、結果として+約5キロで抑えられたのです。
出産後の体重の戻りが非常に早く、産後の退院時には出産前の体重に戻っていました。従来の炭水化物をしっかり摂取する食事管理だと、ここまでうまく体重管理するのは難しかったと思います。
出産後も食事に気を付け定期健診を受診している
3項目陽性の妊娠糖尿病と診断されましたが、たんぱく質を中心とした食事管理で血糖値を管理することで、インスリンを打つことなく無事に出産を迎える事が出来ました。
妊娠糖尿病で血糖値管理に悩んでいる方や、インスリンを打っているのにうまくコントロールできずに困っている方は、食事の取り方を一度見直してみることも検討してみるといいかもしれません。
しかし妊娠糖尿病になってしまった人は、将来的に本当の糖尿病になってしまう確率が高いと言われています。
私自身も、妊娠中ほど厳格ではありませんが、産後1年経った現在でもたんぱく質をしっかり取ることを意識しています。
また先日、念のため1年ぶりに糖負荷試験を行いましたが、糖尿病への移行はありませんでした。
ですが、今後も食事に気をつけつつ、定期的に経過観察を行い、糖尿病へ移行しないよう注意していきたいと思います。