私は、前置胎盤のため1人目を緊急帝王切開で出産しました。
帝王切開で出産している場合、2人目も帝王切開で産むことがほとんどです。
しかし、どうしても自然分娩を経験したかった私は、VBAC(帝王切開後経膣出産)に挑戦することを決心。
今回は、VBAC(帝王切開後経膣出産)の方法やリスク、出産過程など、私の体験談をご紹介します。
目次
帝王切開を経験後、2人目は自然分娩が可能?
私は1人目を帝王切開で出産しました。
その後、待望の2人目を妊娠したのですが、医者からは「1人目が帝王切開だった場合、基本的には2人目も帝王切開になります。」と告げられました。
その時はまさかそれ以外の選択肢があるとは知らず、受け入れるしかないと思っていました。
しかし、日に日に高まっていく「自然分娩を経験してみたい」という強い思い。
それには私なりのいくつかの理由がありました。
- 1人目は緊急帝王切開だったこともあり、術中・術後共にとても大変だった
- 赤ちゃんが生まれてすぐ【新生児一過性多呼吸】でNICUに入院してしまった
- 帝王切開だと入院期間が長く、体の回復も遅い
- 母乳の出がよくなく苦労した
- 1人目はとてもよく泣く子で手がかかり、育児がとても大変と感じていた
(帝王切開で産まれた赤ちゃんに多く出る症状だと説明された)
帝王切開が理由のものもあれば、なんの根拠もないものもあります。
当時の私はこれらが全て帝王切開で産んだからなのではないかと思い込んでいました。
自分の力で産んだわけではないという後ろめたい気持ちや、劣等感のようなものを常に抱えていたのかもしれません。
そこで、帝王切開を経験していてもなんとか2人目は自然分娩で産むことはできないのか調べ【VBAC(帝王切開後経膣出産)】という言葉に目が留りました。
2人目の自然分娩は可能だという事を始めて知るきっかけになりました。
VBAC(帝王切開後経膣出産)について
VBACとは?
VBAC(ブイバック)とは、帝王切開の既往がある妊婦さんに対して、次の妊娠で自然分娩(経膣分娩)できたことをいい、【VaginalBirth After Cesarean】の略です。
正確には帝王切開後に自然分娩(経膣分娩)を試みることを【TOLAC(トーラック):Trial Of Labor After Cesarean delivery】といい、TOLACをして成功したのをVBACと呼びます。
VBACの成功率は60%〜80%、メリットもあればリスクもつきものです。
全体の40%〜70%の経産婦が、VBACを希望していると言われています。
また誰でもVBAC(帝王切開後経膣出産)に挑戦できる訳ではありません。
- 帝王切開既往が1回であること
- 正期産の出産であること
- 今回の分娩で帝王切開が必要ではないこと
- 前回の帝王切開が子宮下部横切開であること
そして、どこの病院でもVBACを受け入れているわけではありません。
幸いにも私はギリギリ通える範囲で受け入れている病院を見つけることができたので、転院することにしました。
費用に関しては、病院によって様々なようです。
転院することに決めた病院では基本的には特別な費用はかからず、通常の経膣分娩とほぼ同じだと説明されました。
(※手術ではないので保険の適用にはなりません。)
VBACのメリット
VBACを選択することのメリットといえば、やはり分娩後の回復が早く、成功すれば帝王切開に比べて合併症も少ないことです。
帝王切開で出産すると最低でも6日間は入院しなければならず、退院後も傷が完全に癒えるまでは時間がかかります。
上の子がいると思うと入院期間は短いに越したことはありませんし、産後もそんなに休んでいられません。
そしてなにより「自分の力で産んだんだ!」という自信に繋がると思ったのです。
VBACのリスク
VBACに挑戦するには残念ながらリスクも伴います。
子宮破裂が起きる可能性があり、失敗した場合はすぐに緊急帝王切開に切り替えられるものの、予定帝王切開より合併症が多くなる可能性もあるそうです。
万が一、子宮破裂を起こしてしまうと出血多量の場合は子宮摘出が必要だったり、赤ちゃんも低酸素症や低酸素性脳障害を起こしてしまう可能性もあると説明されました。
VBAC挑戦について家族と相談
転院した病院で今回の妊娠経過や体の状態について詳しくみてもらうと、幸いにもVBACに挑戦することは可能とのことでした。
しかしリスクがある以上、家族の同意は必須です。
最初、主人は「希望を尊重してあげたいけど、リスクが怖い」と言って100%賛成ではありませんでした。
確かに、もし逆の立場だったら少しでも危険があるような事に挑戦して欲しくありませんよね。
母体のリスクのだけでなく、胎児にもリスクがあるとなると簡単に決断する事は出来ません。
しかし、VBACに挑戦したいという強い思いを伝え、家族を説得し理解を得る事が出来ました。
そして、決して無理はせず少しでも危険と判断されれば緊急帝王切開での出産をすぐに受け入れることを約束し、納得してもらえました。
ついにきた陣痛!VBACならではの出産過程
予定日の2週間前、夕方頃から頻繁にお腹の張りを感じるようになりました。
経産婦とはいえ陣痛未経験だった私は、これが陣痛の始まりだとはわかりませんでした。
しかし、じわじわと増していく痛み。不規則だったお腹の張りも、夜には約10分間隔に。
通常の経産婦であれば、5分間隔になるまで病院に来なくて大丈夫と言われている場合もあるようですが、VBACの場合は急速にお産が進んで子宮破裂になるリスクがあるため、10分間隔で必ず来院するよう言われていました。
上の子はすでに寝ていたため、1人でタクシーに乗り病院へ。
夜中の病院に着くと、すぐに分娩監視装置(赤ちゃんの状態を把握する装置)をお腹に付けられました。
そして、陣痛と少しでも違う痛みがあればすぐに教えるよう何度も言われました。ですが、陣痛と違う痛みと言われても、どこもかしこも痛すぎてそれが違う痛みなのか判断できず、不安の中痛みに耐えているうちに陣痛は5分間隔に。気がつけば次の日の朝になっていました。しかし子宮口はまだ2cmとの事・・・。
なかなかお産が進みません。
「こんなに痛いのにまだ2cmって」と絶望しました。
VBACの場合、無理にお産を進めてしまうと子宮破裂のリスクが高まるとのことで、陣痛促進剤は使用できません。
主人と上の子も病院に到着し、見守られる中激痛に耐え続けましたが子宮口はまだ5cmとのこと・・・。陣痛が10分間隔になってから既に28時間経っていました。
分娩監視装置では赤ちゃんの心拍もしっかりしており特に異常は見受けられなかったのですが、なかなか進まないお産とあまりに痛がる私の様子に助産師さんたちも少しざわざわし始めました。
先生が来てエコーで赤ちゃんの状態を確認し、顔をしかめこう言いました。
「回旋異常だね。これは相当痛かったんじゃない?残念だけど、帝王切開しましょう。」
頭が真っ白。
「ここまで頑張ったのになんで」と涙が止まりませんでした・・・。
回旋異常のためVBAC失敗、緊急帝王切開でのお産へ
回旋異常とは?
通常、分娩の経過とともに胎児は産道を通りやすいように少しずつ向きを変えながら骨盤内に進んでいきます。
これを回旋と呼びますが、この回旋が適切に行われず分娩の進行が妨げられる状態を回旋異常と呼びます。
いろいろな原因があるようですが、私の場合は胎児が小さめだったため骨盤にはまってしまい、うまく回旋できず下に降りてこられなくなっていると説明されました。
通常の経膣分娩で回旋異常と判断された場合は陣痛促進剤が使われたり、吸引分娩や鉗子分娩といった方法もあるようですが、VBACの場合はこのままお産を続けることが危険と判断され、緊急帝王切開が選択されることが多いようです。
VBAC失敗、緊急帝王切開へ
私のVBAC挑戦は失敗しました。
ここまで何十時間も苦しい陣痛に耐え、自分の力で産むことだけを考えて頑張ってきたのにと悔しさでいっぱいでした。
しかし家族との約束もありましたし、何よりお腹の赤ちゃんの安全が一番だと我に返り、緊急帝王切開を受け入れることに。
そんな中でも2、3分間隔で続いている陣痛に耐え同意書にサインし、ものすごい早さで緊急帝王切開の準備が進んでいきます。
助産師さんたちの「残念だったね。でも本当にここまでよく頑張ったね。赤ちゃんもお母さんが頑張ってくれたとわかっていると思いますよ。」という言葉にまたしても涙が溢れてきました。
そこからはあっという間でした。
手術開始から約30分、元気な産声とともに赤ちゃんが取り出され、子宮破裂や癒着はなく、母子共に無事でした。
どんな形でも出産は奇跡!
なんとしても自然分娩で産んでみたいという強い思いを持っていたので、VBACに失敗してしまったことは本当に残念でしたが、母子共に無事であったことに心から安堵しました。
結果としては2人目も帝王切開になってしまいましたが、陣痛を経験できたこともあり、満足できる誇らしい出産になったと思っています。
悔いはありません。
私の希望を尊重してくれた家族や、サポートしてくれた先生、助産師さんには感謝しかありません。
リスクと隣り合わせでしたが、VBACに挑戦してよかったと心から思います。
私のようにリスクを承知でVBACに挑戦するのも、リスクを回避するため最初から帝王切開を選択するのも、どちらも勇気がいることだと思います。
自然分娩でも帝王切開でも子供の誕生は奇跡に変わりありません。
私の体験が、VBACを挑戦しようか悩んでいる方の少しでも参考になれば幸いです。